季節の点心 「水無月の点心」

季節の点心-『水無月の点心』

昔は嫌だった、しとしとと降る雨の音が今では心地よくなりました。

この時期の雨は国土を潤し、秋の稔りに向かう糧となります。

日本料理の発達はこの良質な水があってこそここまで高められました。

これからの時期は鱸や鯉を《洗い》でいただきますが、

これなど正しく良い水の豊富な賜物です。

切り身を流水にさらして旨味であるはずの脂肪を落として、

さっぱりとした舌触りに変えて別種の美味へと導くのも

良い水があればこそです。

川魚の最高位の鮎も、清らかな流れが爽やかな美味に育てているのです。

今月の点心は、その雨の中を緑滴にかかりながら屋形船で

川下りする様子を設えました。

 

【献立と器】

■ 筏流しの折敷には屋形船の向付に蒸し鮑のお造り。

ビールは木地の樽形杯で。

  ・筏流しの折敷 / 呉藤 友乗 作(山田平安堂)

  ・屋形船形向付 / 周作 造

■ お椀は《水藻椀》。

天豆の半づき餡を吉野葛で包み、蓴菜とともに椀種に。

  ・柳に流水椀 / 呉藤 友乗 作(山田平安堂)

■ 焼きものは若鮎の塩焼き。蓼酢添え。

  ・焼き物の長皿 / 中村 梅山 作

  ・白磁輪花皿 / 川瀬 竹志 作

■八寸は青磁皿で。季節のもの取りどり。

  ・青磁皿 / 川瀬 忍 作

■笹巻きご飯と香の物は木地長皿に。

料理:丹 敏男(白虹 http://www.byakko.link/index.html)

写真:渡辺 七奈

文章/器提供:田邊 昌(SAJIN club主宰、日本伝統食文化協会副代表)

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